昨年も 「住みなれた街で暮らし続けたい」 そんな思いを実現させようと仲間達と取り組んできた地域活動の数十年間を思い起こされる方々との出会いがありました。その中の一例をご紹介しましょう、
「写真に出ている方や!」。二人のヘルパーで行う入浴サービスで訪問したお宅の玄関先でのことでした。相方のヘルパーに 「私のこと何か話されましたか?」 と訊ねると、「いいえ」 との返事。居宅支援利用のT君は18歳。出迎えてくれたのは3人の男の子のお母さんA子さん。
ヘルパーが訪問する先が、生協の組合員とは限りませんが、Aさんはエスコープ大阪の組合員だったのです。風呂場にはマルセル石鹸が置かれています。「あれ 良いですよね。」とA子さん。長年使い慣れた人には当たり前の会話ですが、ヘルパーとして会話する際には、何かと縛りの規制があるのですが、その縛りを解きほぐしていくのは、その場でのお互いの感性が頼りです。
クリスマスイブを前に訪問した夜のこと。クラブ活動から帰っていた末の弟君がくつろいでテレビを観ている傍で、何者かがこちらを見上げています。皆さんとの挨拶もそこそこに、その物体の傍に近寄ると‥‥。
10年前、お兄ちゃんの入退院で留守にすることが多かった頃にお父さんが買い求めてきたのがぬいぐるみ 「まんまちゃん」。3歳の彼は、「まんまちゃん」 を毎夜抱きしめて寝床に行くようになったとか。お母さんの代わりとなった 「まんまちゃん」 はやがて、ぼろぼろとなり、2代目の 「まんまちゃん」 が登場。
しかし、2代目もぼろぼろとなり、3代目を探されたのですが、倒産しているとかで見つからず、困り果てた末の助っ人がA子さんのご両親。仕立て屋を営まれていたというお二人が、ぼろぼろの生地を解体、紙に書き写し、初代に近い生地を探し求めて歩かれて縫製し、誕生したのが、この3代目 「まんまちゃん」 だったのです。
奥の棚から2代目のぼろぼろ生地と解体製図の紙を取り出しながら説明してくれたA子さん。手にした「まんまちゃん」の数箇所には、明らかに他所とは異なる極太黒糸で補修された跡が‥‥。 「あの子、自分で縫ったんですわ」 と笑顔のA子さん。
やがて帰宅されたお父さん。 「あれFHOキャチャーで100円でこうたんですわ〜」 と豪快に笑われていました。 「まんまちゃん」 3代目誕生までのご家族のそれぞれの想いが伝わる一瞬でした。最後に帰宅した高校1年生の次男君がヘルパーに挨拶され、まっすぐに向かうのはベットに横たわっているお兄さんの傍へ。無言で手を握る彼の後姿に、言葉にならない頼もしさを感じました。
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