ご無沙汰しとります!

2008年6月9日
  


下村恵美子さん

宅老所よりあい/下村恵美子さん
福岡市中央区地行1丁目15-14


「あんたも ここに きんしゃとですか?」
「はい」
「ここは よかとこですばい。 はよ、きんしゃい」
「はい ありがとうございます。このお兄ちゃんは どげんか人ですか?」
「やさしかばい。」

  
午後のおやつを楽しまれ、宅老所よりあいデイサービスからご自宅に帰る車に乗り込む準備をされていたご婦人と私の会話です。ご婦人の介助をされていた20歳代の男性を見上げながら「やさしかばい」とさりげなく返された言葉に、「良かった〜」とはにかむ彼。

一年ぶりに訪問した宅老所よりあいがある場所は、福岡ヤフードーム周辺の開発エリアと隣接した場所なのですが、戦災から免れた住宅も残っている趣ある一角にあります。よりあいの建物は築96年。数度にわたって行われた改築工事は、“施設”ではなく“住まい”として訪れる方々を優しく迎えてくれます。

道路に面した玄関からではなく、隣地との境に置かれたグリーンエリアから「こんにちは!」。奥にある下駄箱に靴を入れ、縁側から外を眺められていた方々と改めてご挨拶。

  

下村恵美子さんが来客の対応をされている間、3時のおやつを楽しまれている皆さんとお話しながら、“住まい”の中を見学させて頂きました。隣家とは塀はなく、植木鉢が置かれているだけ。道路に面した場所はチェーンもなくオープン。認知症の方であっても“鍵をかけない”を宣言されている宅老所よりあいの姿勢は、当初から今も貫かれていました。
 
5月に拡張工事が行われたデイルームエリアの縁側。訪問された方も腰掛けてお話が出来ます。

  

敷地の端に置かれていたのは“福岡版・雨水タンク”。ボランティアの方々による設置です。

ふたつの建物は渡り廊下で一体化されています。

グループホームの建物の周囲は全て縁側仕立て。左エリアがデイルーム。右エリアがグループホームです。

拠点を別の場に移し、宅老所よりあいらしい“グループホーム”づくりを検討して、女性建築家グループによるプレゼンの場にお邪魔したこともありました。

様々な検討を重ねる中で決着したのが、今までの建物を賃貸から取得へ。さらには、裏敷地にあった別棟も取得し、受け入れ12名のデイサービス(介護予防認知症対応型共同生活介護)と5名の方が住まうことができるグループホーム(認知症対応型共同生活)を改造工事によって実現することでした。

グループホームの入り口に掲げられていた宅老所よりあいの理念。
  

女性3人、男性1名の方が生活されています。夕食と朝食はグループホームで、昼食はデイサービスで調理されています。訪問させて頂いた日は、お一人がベットで休まれていましたが、他の3名の方々はデイサービスエリアで皆さんと過ごされていました。

デイサービスに通ってた方が入居者になるケースが大半だそうで、おやつを楽しまれていた方々のどなたが入居されているのかは一見しただけでは分かりません。

今夜の夜勤は就労2年目の可愛らしいスタッフです。縁側ではお布団が干されています。
  

渡り廊下と縁側で一体化された二つの建物。渡り廊下に座り込み、穏やかに過ごされる皆さんに触れていると、爽やかな風を感じます。風の抜け道を計算して改造されたようです。

「あの柱のそばにおる 大きな人んとこまで 行きたか」と帰宅準備をされていたご婦人が繰り返えされる言葉。うなずきながら介助してきたスタッフ。大きな人とは下村恵美子さんのことだったようです。

施設を退職した3人の女性たちによる認知症の方々に寄り添う生活が始まったのは1991年。全国に先駆けて宅老所と名付けて始まった動きは、“ぼけてもその人らしく生きる”ことを支援する全国的な動きとなり、2007年4月に行われた介護保険改正で「小規模多機能型居宅介護」として制度化され、社会でも評価される取り組みとなっています。


しかし…深いため息とともに、下村恵美子さんの口から洩れるのは
「どげんしょうもなかですよ。 今の介護保険は……」

肩の力を抜いた彼女の表情に、深い想いが伝わってきます。

「通って、泊まって、住める」という小規模・多機能型の試みには、
まだまだ課題も山のようにあることでしょう。

彼女の後ろには、よりあいで最後の時をむかえられた方々の
遺影と位牌が祭られています。

介護保険制度だけでは暮らしていけない沢山のケースを知り尽くした彼女たち。

すでに「誰もが、安心して暮らせる街づくり」を目標に、
街の商店街や大学などによる「ご近所応援隊」の結成へと動き出している彼女たちですが、
資金不足が大きな課題です。

「ぼけたらよりあい」という詩人の谷川俊太郎さんは、宅老所よりあいの応援団のおひとりです。

おならうた    谷川俊太郎
   
いもくって
くりくって
すかして
ごめんよ
おふろで
こっそり
あわてて
ふたりで ぴょ

谷川俊太郎さんのうたやよりあいの合言葉“あなたの笑顔は私の元気!”がプリントされたTシャツの販売や年一回開催されるバザーがなによりの資金づくりのようです。

ヘルパーとして関わってきたこの一年。寄り添うことの大切さを感じる毎日です。金剛よりあいの名称は、当時のはんど代表・柴田恵理子さんが下村さんにお願いして“よりあい”の名称を付けさせて頂いています。

デイルームに関わりながら、次の展開への必要性を感じている柴田恵理子さんたちの想いを形作けていけるのどうか。今後の展開を描く中で、宅老所よりあいのみなさんの悩みと希望から大きな示唆を感じる仲間づくりを進めなければなりませんね。

“あなたの笑顔は私の元気!”

“あなたの笑顔は私の元気!”のTシャツは大母の愛用着となって十数年が経過しています。カンパを兼ねて沢山仕入れて来ました。ご協力して頂ける方はメールでご連絡ください。

daihaha@kyp,biglobe.ne.jp


縁側から見送ってくれた下村恵美子さん

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